生まれつきの才能と努力、どちらが重要?~『超一流になるのは才能か努力か?』

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超一流の才能に興味あり

天才を作り出そう!と考えているわけじゃないけれど、『超一流な才能』についてはとても興味があります。

イチローさん、中田英寿さん、浅田真央さん、羽生善治名人、藤井聡太四段、モーツアルト、ピカソ、夏目漱石、村上春樹、スティーブン・キング。

ほかにも各分野で大きな才能をお持ちの方々は、生まれ持った才能があったから世に残る実績を作り上げたのか?それとも努力によって才能を開花させたのか?とても興味があるのです。

そこで『超一流になるのは才能か努力か?』という本を読んでみました。

『超一流になるのは才能か努力か?』とは

本書では、適切な訓練や練習を通じて、人間の脳や身体の驚くべき適応性を引き出し生み出す力について語られています。

著者は二人、フロリダ州立大学心理学部教授のアンダース・エリクソンと、サイエンスライターのロバート・プール

本格的に研究されてきた人の書く本なので、知識の焼き増しのような啓発本と違って、実際の研究が具体的で分かりやすかったです。これまで私の中であやふやだった才能と努力についての認識がはっきりとしてきました。

この本を読んで欲しい人

この本を読んで欲しい人を挙げると、

■自分の道で伸び悩んでいる人
■教師やコーチ
■子育て中のお父さんお母さん
■手相師をふくむ占い師やカウンセラー

などなどです。ご自分の才能について悩んでいる人にはお勧めです。私自身もすごく勉強になりました。

手相鑑定でよく質問される「私には〇〇の才能ありますか?」というクエスチョンに、よりいっそう自信を持ってお答えできるようになるでしょう。

ベテランには耳の痛い話

私をふくむ中高年にとって、耳の痛い話を先に。

私も体験したので納得ですが、運転手でも教師でも医師でも、キャリアの長さが能力向上にはつながらない、という研究結果があるそうです(^_^;)

私たちの多くは、若手よりもベテランの方が物事に精通している=上手なはずだと思いがちですが、ベテラン医者は5年目の若手医者より技能が劣っている可能性が高い、のだそうです。もちろん例外もあるのでしょうが、どの分野でも言えることだとか。

あるスキルが一定レベルに達すると、ただ練習(日常業務)を繰り返すだけでは徐々に劣化していく。劣化を防ぐには改善に向けた意識的な努力が必要になる。

ベテランが意図的に手を抜いているわけではありませんが、意図的にスキルを研き続けないかぎり、後進に追い越され、低いスキルに落ちてしまう。

これは経験が必要と思われがちな手相師&占い師もそうで、すべての分野で言える話だと、体験的にも感じています。

私の実体験

タイ人ベテラン歯科医師に下手な?治療を施され歯を抜くはめになり、タイ人若手歯科医師に変えたとたん、最新医療で快適な治療を受けられた、という経験や、

(タイ人歯医者の全体のスキルが低いのか?と思っていたら、ベテラン歯科医師のスキルの劣化だったようです)

ベテラン教師より若手教師の方が熱心で分かりやすかったり、ベテランマッサージ師より若手マッサージ師のほうが上手だったり、ベテラン占い師の回答より、若手占い師の回答のほうがスンナリ受け入れられた?!などなど(^_^;)

あなたも経験したことありませんか?

この説は、経験不足に悩む若手には朗報ですが、ただ経験を積むだけではスキルが低下するのは若手だって同じ。中高年も若手も、いまのスキルを向上させていくため(あるいは低下させないため)に、どうすれば良いのか?知っておくべきだと思います。

練習しても差が出るのはなぜ?

多くの人が、何かしら上達するため努力をしています。

ピアノが野球が語学が上手になりたい、テストで良い成績を取りたい、売り上げを伸ばしたい、などなど。

でもその目標が達成できる人とできない人とがいると同時に、達成されたレベルもさまざまです。

練習を続けたことで一流野球選手となった人と、愚直に練習を続けたのにアマチュアレベルで終わった人と、人によって差がでるのはなぜでしょうか?

先に「愚直に練習をつづけたのに」と書きましたが、本書によると、「愚直」だから成果がでないのだそうです。

必要なのは「はっきりした目的」をもって練習に挑むこと。それと同時に「集中して行う」「フィードバックをもらう」「コンフォートゾーン(居心地のいい場所)から抜け出す」というのが大切なんだそう。

では各項目がどんなものか見ていきましょう。

その1:はっきりした具体的目標をもつ

例えばピアノの練習であれば、「ピアノが上手になりたい」という漠然とした目標だけではなく、「課題曲を適切な速さでミスなく最後まで3回連続して弾く」といった具体的な目標を持つべきなんだそう。

また、長期的な目標を達成するために(例えばプロのピアノ奏者になる)、小さなステップ(次の発表会までに〇〇という曲を完成させる。そのためには3回連続してミスなく弾けるようにする。そのためには苦手な△△の部分を集中的に特訓する。そのためには先生に多めにレッスンしてもらうなど)を具体的にいくつも挙げていく。

漠然とした目標を現実的に達成させるためのステップを用意。この点に関しては分かってない人、間違ったやり方で進んでいる人、量的に足りてない人は多いのかもしれません。

偉そうに書いている私がその一人(^^;。

その2:集中して行う

やるべき作業に全神経を集中しなければ、たいした進歩は望めない

当たり前のことですが、練習をたらたらと1時間したところで身につくこと少ない、というのは想像に難くないですが、誰もが1時間のあいだ、全神経を研ぎ澄ませて練習に励んでいるわけじゃないですよね~。

「集中して行う」は言うは易く行うは難し。だからこそ才能に差が出るのでしょうね。

その3:フィードバックをもらう

スキル上達のためには、フィードバックが不可欠。

自分の未熟な部分はどこか?どういうふうに未熟なのか?正確に特定することで、未熟な部分を改善し、スキルを磨いていく。

自分で気づけるならいいけれど、そうでなければ外部からフィードバックを受けるべき、ということです。

たしかに独りよがりに満足してたり、何が間違っているのか分からなければ、それ以上上達を望むのはむずかしですもんね。

その4:安住しない(居心地の良い領域から飛び出す)

本書では『コンフォート・ゾーン(居心地の良い領域)から抜け出す』と日本語訳されてますが、私は『安住しない』と理解しました。

この『安住しない』が目的ある練習の中で最も重要な点。

楽にできる練習を例え1万時間続けても、今よりも上達するのは不可能であり、逆にスキルが衰える可能性さえある。

せっかく練習するのなら、能力の限界ぎりぎりの課題をやること。その後スキルが向上すれば、限界ギリギリの課題をもっと上に設定するのを繰り返す。

ちなみに能力の限界ギリギリの課題とは、まったく歯が立たないと思われることだそうで、それに挑戦することが、スキル向上のためには何よりも大切だそうです。

世の中は進化し続けている

限界ギリギリに挑むなんて無理だよ!人には限界ってものがあるでしょ!という意見がでてきそうですが、本書では下記のように述べられています。

どんな分野においても絶対越えられない能力の限界に到達したという明確なエビデンスが示されるケースは驚くほど稀。

例として挙げられたのがマラソン優勝者の記録。

1908年は2時間55分18秒でしたが、本書の書かれた時点では2時間2分57秒。約100年間で52分も縮められたわけです。

110年前にはあり得なかった記録が、いまなら可能になったわけです。

これは『練習量の増加』と『練習内容の高度化』がもたらした結果だそう。

そういえば私も、1988年のカルガリーオリンピックで優勝したフィギアスケート選手カタリーナ・ビットの演技を久しぶりに観たら、現代と比べ迫力のなさに驚いた経験が。当時は最高峰の一人だったのにね。

翻ってみれば、現代のフィギアスケーターたちのレベルがどんどん上がっている結果で、ビットの責任ではまったくなく、世の中が進化し続けている証拠なのです。

限界ギリギリの課題で壁にぶつかったとき

でも、その道で上達したいけれど、どう頑張っても大きな壁があって前に進めず、退却を余儀なくされる場面てあるよね?と言う声が聞こえてきそうです。

私も「自分には才能がないから無理だ」と諦めた事柄がいくつかあるので、その気持ちよーく分かります。

でもだからこそ、その道で壁にぶつかったとき諦めてしまうか、できないと思われた壁を乗り越えたかが、一流とその他とを分ける分岐点なのでしょう。

悔しいですが、限界ギリギリから逃げたら上達しないのは当たり前。成功者に楽天家が多いのは、普通ならできそうにない事を楽天家なら諦めず頑張れるからなのかもしれませんね。

生まれながらの天才はいない

けっきょく、生まれながらの天才はいるのかいないのか?

本書が出す答えは、「生まれながらの天才はいない」です。

たとえば音楽の神童モーツアルト。

幼少期から神童と騒がれてましたが、それは父レオポルトの熱心な音楽教育があったからこそ、と本書では結論づけています。もしもモーツアルトが音楽に親しむ環境にいなければ、あれだけの才能は開花しなかったはずだと。

その根拠として、2014年に心理学者・榊原彩子さんが発表した研究によると、2歳から6歳までの子供24人に絶対音感習得のトレーニングしたところ、1年~1年半で全員が絶対音感を習得という報告を挙げています。

モーツアルトは音の聞き分け=絶対音感を持っていたと言われていますが、幼いころからの父の音楽教育の賜物だったというわけです。

年齢だって人によっては絶対的な壁ではない

では大人になったら絶対音感を身につけるのは不可能か?

音楽専攻の大学生26人に絶対音感のトレーニングを試す実験がありました。それによると元々耳が良かった一人の学生は絶対音感を持つレベルまで到達し、元々正解率の低かった3人の学生の正解数は2~3倍に増え、残り22人はトレーニング前と変わらなかったそうです。

ここから言えるのは、年齢の壁だって絶対的ではないということです。もちろん適切な時期にトレーニングしていれば全員が習得できたものを、大人になると習得できる人とできない人が生まれる、わけではありますが。

誰がトッププレイヤーになれるか予想できない

「生まれつきの天才」を特定する方法は、これまで誰ひとり見つけていない。先天的に能力が決まってないから、誰がその道のトッププレーヤーになるか予想することはできない。

どの分野でも練習こそが上達への鍵であり、遺伝子に役割があるとすれば、苦しい練習をやり続けられる性質を持つか、ではないか?と本書では語られています。

その道の師の存在

最後に、本書を読んで一番私が考えさせられた点。それは「師の存在」です。

ただ闇雲に努力しても才能は伸びない。正しい努力が大切だとうたっているわけですが、その正しい方法を見つけるためにも、それに詳しい人からの教えが必要だと。

そこを読んで私の頭に浮かんだのが、ビジネス界で大成功したSoftbankの孫正義さん。

彼は差別や貧乏から脱出するため米国留学するのですが、その前に「アメリカで何を学ぶべきか?」と日本マクドナルド社創業者の藤田田さんへ質問し、コンピューター関連を学べとアドバイスされたそうです。

もしもあの時、別の道に進んでいたら、いまの時代にそぐわない分野でビジネスを始めていたかもしれません。そうしたら今ほどの成功はなかったかもしれません。

藤田田さんはIT関係の人ではありませんが、ビジネス界で成功し、アメリカとも関係の深いお仕事をされているので、適切なアドバイスができたのでしょう。

読書で人生を変える

とても運命を感じさせる孫さんの経験談ですが、でも一般的に、その道の師を見つけるのって難しそうだと思いませんか?

孫さんは高校時代に藤田さんの本を読んで感銘を受け、この人に教えを請いたいと考えわざわざ足を運んで質問したそう。

藤田さんが身近な人だったわけではないんです。

しかも何度も門前払いされながら、諦めずに門を叩きチャンスを得たのですが、そもそもの始まりは読書。読書によって人の人生は変わってしまうという好例だと思うのですが、いかがでしょうか?