村上春樹の短編小説『品川猿』の意外な流れに思うことがあります。
細かい内容は、本書を読んでもらうのが一番ですが、とても考えさせられた部分が下記。
「あなたのお母さんは、あなたのことを愛してはいません。(中略)でもあなたはそのことを意図的にわかるまいとしていた。その事実から目をそらせ、(中略)負の感情を押し殺して生きてきた。そういう防御的な姿勢があなたという人間の一部になってしまった」
東京奇譚集 (新潮文庫)の中の『品川猿』おお!はっきり書いちゃうんですね。そんなこと言っちゃう人ってそうそういませんが。
でも残念なことだけど、自分の子供を愛せない親は存在します。
世の中では「親は子供を愛するもの」という概念がはびこっていますよね。
自分が我が子を愛せないことを、親自身が認めるのは難しいですし、社会的にも精神的にとてもきついです。
愛されなかった子供も同じで、自分が親から愛されていないなんて、考えたくもないでしょう。自分は愛されるに値しない人間なのだと証明されたようなものだから。
でも、長く一緒に生活する間柄の家族から愛されてないのは、自然と判ってしまうんですよね。
そして自分が親に愛されないのは自分が悪いからだと自己否定する子供たちを見るにつけ、いっそのこと、世の中には自分の子供を愛せない親だっていますよ、っていうのを一般常識にしちゃったほうが助かる人は多いんじゃないかと。
親が子供を愛せない理由は、親自身の過去のトラウマだったり、夫婦間の問題が発生しているためだったり、親の仕事や金銭トラブルの問題だったり。
いろんな要因があるから、子供であるあなたは自分が悪いから愛されないんだ、なんて考えなくていいんだよ! って概念をスタンダードにしたほうが良いんじゃないかなーと。
『我が子をかわいいと思わない親はいない』という言葉は正しくない。
我が子をかわいいと思う子煩悩な親御さんはいるけれど、すべての親がそうじゃない、という事実を認めませんか。
わが子を愛せない親のためにも、親から愛情を受けられない子供のためにも。
そこから新しい一歩が始まるんじゃないかな~。